これまでのモノづくりだけでは通用しなくなった日本の製造業
これまで、日本の企業、特に製造業は技術開発とモノづくりに注力し、1980年代までは既存顧客相手に品質向上とコストダウンによって良いものを安く作ればうまくいっていたこともあり、マーケティングは特に必要ありませんでした。
しかし、国内市場が飽和し競争が激化、消費者ニーズが多様化してくると、折角製品を開発しても売り上げに結び付かないケースが増え、技術的に優位性があったとしても顧客が期待する価値に合わなければ買わなくなりました。
又、流通チャンネルを軽視する傾向があり、流通チャンネルがパワーを持ってくるとこれまでの技術開発偏重のモノづくりだけでは立ち行かなくなりました。
顧客を理解し顧客にとっての価値は何かを見つけ、他社とは違う自社独自の方法で実現することが求められています。つまり、誰に何をどのようにして自社の製品やサービスを提供するのかを明確にし、買って貰える商品づくり、販売の仕組みを構築して行くことが必要です。
押し寄せる変革の波
企業を取り巻く市場環境は刻々と変化しており、先ほどあげた課題に呼応するように変革の波が押し寄せています。
いくつか例をあげると、化石燃料から風力水力、太陽光などへのエネルギー革命、電動化や自動運転化によって進む車革命、IoTとロボットの普及による工場革命、バイオテクノロジーによる医療革命、ビッグデータと人工知能による社会革命、IT高度化による物流革命など社会の隅々まで変革の波が押し寄せ相互に影響しあい、世界規模で社会が大きく変わろうとしています。
成長に欠かせない両輪、イノベーションとマーケティング
経営の父と呼ばれるP.F.ドラッガーは企業の成長に欠かせないのは「イノベーション」と「マーケティング」だと指摘しました。
このような大きな環境変化は脅威ではありますが、自社の成長機会にもなります。しかし、内向きの姿勢では事業機会を見つけることはできません。市場や顧客の方を向いて変化の先を読み自社の事業機会に変えて行くという積極的な姿勢が求められます。
そのためには、イノベーションをこれまでの技術開発やモノづくりだけの狭い範囲ではなく、顧客にとっての価値を実現するためのどのような対応をすればよいのかを大きな範囲で考える事です。そしてもう一つ重要なことは、売り込むのではなく顧客に買って貰えるようにする為のマーケティング力を付けていくことです。
企業はイノベーションとマーケティングの両輪を回して成長して行きます。片方だけではだめです。
これまで日本の企業はイノベーションには注力してきましたが、マーケティングは疎かにしてきました。
国内市場が縮小していく中、海外展開はこれまで以上に重要な成長戦略となります。
しかし、異国の市場でマーケティングに長けた海外企業と競争していくにはマーケティングをしっかりと経営の中心に据え取り組んでいく必要があります。